神秘の世界 上色見熊野座神社の後編である。
前編はこちら
上色見熊野座神社 穿戸岩
穿戸岩
上色見熊野座神社の勘所は参道だけではない。
社殿からさらに登ったところにある風穴【穿戸岩】(うげといわ)も見応えがある。
山頂に祠があったり山自体が御神体の場合、火山の影響や利便性から低地に社を置くところもあるが、それとはやや形態が異なるようだ。
社殿の左側にコンクリートの道がある。再び竹の杖が置いてあるので、必要な場合は持っていく。
社殿での参拝後すぐに穿戸岩を目指す人が多い。
やっと石段を登り終えたところで、今度はコンクリートの傾斜を登らなければならない。体力に自信のない人や年配者、ヒールのある履物を履いた女性にはやや過酷だ。
同行者は、そこから先も登るかどうかの意思確認はしたほうがいいだろう。
観光で訪れる人も多いため、森とは似つかわしくない服装の参拝客も多い。
コートやヒールに身を包んだ女性を見ると、足は痛くないだろうかと他人事ながら心配になるし、傍にいる男性達に「彼女(奥さん)の足に気を遣ってあげて!!」と心の中で呟く。
今から来訪の計画を立てる人は、参加者へ履物について一言添えてあげる事を勧める。
貴方の株があがるかもしれないし変わらないかもしれないが、疲労で険悪な雰囲気になることは避けられる。
連れ合いが険しい顔をしていたら、歩幅を緩めそっと手を差し出そう。
ミスタードーナッツのオールドファッションのような重厚感。
間近でみるよりも辿り着く手前で顔を上げ、全体像を捉える方が自分と風穴の対比を実感できる。
弓張月のようにくり抜かれたこの穴が穿戸岩である。
弓張月(ゆみはりづき)とは弦月(げんげつ)・半月のこと。
神聖な場であること、過去もそうであっただろうことがここに立つと直に感じられる。
アーチをくぐり上から見下ろすと、風穴の光がさしこむ先に社殿があるのが見える。
賽銭箱の傍に「ここより先は危険なので立ち入らないように」との看板がある。実際このアーチの真下の地面は滑って危険なことと、その先は崖になっているので下手に登ろうとしない方がいいだろう。
私は竹の杖を付きながら慎重に登るが、下るときに滑ったこともある。
この景色を見て満足したら、再びアーチをくぐる。
ほんの一時の事だった。15時39分、傾いていく太陽からのプレゼントのような瞬間。
画像を編集してみたら更にカッコよすぎたので遊んでみる。
※ここからしばらく自己満足の写真が続く。
さてさて、この風穴は自然が創り出したのか、鬼八が蹴ったのか。
この穿戸岩には【鬼八伝説】という話がある。
鬼八伝説(きはちでんせつ)
※ここからは、私なりに理解している範囲の鬼八伝説を現代風にお伝えする。間違いがあれば御一報いただきたい。
神武天皇の孫にあたる健磐龍命(たけいわたつのみこと)は、九州の地を治めるよう命じられ火の国へ。
※系譜には諸説あるらしいが、ここでは孫説を採用している。
タケイワタツノミコトは矢を射って従者の鬼八法師に拾わせていた。
こうして矢が放たれる都度、鬼八は矢を拾いにいく。
タケイワタツノミコトの荒ぶる魂が岩君大将軍(いわぎみたいしょうぐん)を出現させた。
そして霜は止んだ。
完
鬼八伝説を描いて
これは鬼八伝説を筆者が理解しやすいように、かなり脚色して作った話である。
※読者ではなく、筆者個人のための理解図絵であることをご理解いただきたい。
帰り
登って来た道をそのまま帰る。
社殿まで下ると、社殿の横にコンクリートのカーブ道があるのに気づくだろう。このカーブ道からも帰れるし、また石段を下りて帰っても良し。
個人的には石段の方が足への負担が少ない様に感じる。
顔がほころんだ思い出
ある日のこと、穿戸岩からの帰り道。
ご年配夫婦と4、50代と思われる娘さんの一組の家族が私の少し前を歩いていた。
ゆったりと歩く母親の斜め後ろに、その様子を見守るかのように娘さん。
時々、竹の杖と足が止まる。無理をせず、自分のペースを大切にしながら。
その3mほど先に旦那さん。足に自信がありそうな旦那さんは軽快に杖をつく。
少し歩いたところで後ろを振り返り、奥さんの様子を伺う。
歩みを止めている奥さんに向かって
「おぶってやろーかー」と笑いながら声を掛ける。
照れくさそうな、また馬鹿な事を言っていると呆れているような。なんともいえぬ奥さんの表情。
若き日の二人と、歳を重ねた二人が同時にそこに居るように感じて、思わず頬がほころんだ。
物語の舞台として
ここ上色見熊野座神社は、アニメの舞台にもなったそうだ。そこは詳しくないので詳細は省く。
まとめ
前編後編に分けて記した今回の記事だが、それほどにこの上色見熊野座神社への私なりの愛を込めたつもりだ。
記事を書いていくうちに梛の木が欲しくなった今日この頃。
神秘の世界 上色見熊野座神社で神々の世界を垣間見よう。